読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

夢を買う女

身を持ち崩さない程度に夢をみる女のひとりごと

人生でのオペラデビューをイタリアでしてきた。 -Aquagranda-

オペラ 海外舞台


せっかくなので、本場のオペラを観に行こうと、フェニーチェ劇場にいってきました。だって日本で観るよりきっと安いし。いや、オペラは人生で一度も観たことないんだけど。

 

www.teatrolafenice.it

 

こっち来てから調べて初めて知ったのですが、オペラって毎日とか毎週とかやってるわけではないんですね。いや、もちろん劇場にもよりますが。宝塚的なロングランだとばかり思っていたら、全然なくてびっくり。有名作品かどうかなんて選んでられないし、そもそもオペラの知識ゼロで、音楽の知識もない人間なのだから何でもいいやと思って、2016-2017シーズンのフェニーチェの一作目のチケットを取ることにしました。

劇場に聞いてみると、なんとこの公演、学校用の貸切があるらしく、それなら学割で10€で観れるとのこと!これは行くしかない!ということで当日券で行ってきました。

当日チケットカウンターあたりにいると、学生(しかもどう見ても中高生)たちがたくさん!しかもみんなびっくりするほどラフな格好!ジーパンどころかスウェットの男の子までいるではないか‼ヅカ観に行ってもそんな人いないと思うと本当にびっくりです。

で、10€だし、まあ、バルコニーの上の方かと思っていたらまさかの一階席!後ろから2,3列目で端ではあったけれども、もう席が良すぎて感動です!

f:id:mm118:20161125062015j:image

Plateaが日本でいう1階席のこと。あえて日本語訳すると”平土間”らしい。

 

そして、劇場が思ったよりも狭い!床面積でいくとドラマシティぐらいしかないんじゃなかろうかという狭さ。オペラといえば帝劇や梅芸メインホールみたいな、2000人規模のとっても大きな劇場でやるものだと勝手に思っていたので、舞台からの距離が近くてうれしかったです。そして今回はイタリア語と英語両方の字幕も出てくれました。ベニスの商人の時よりかなり理解しやすかった。(ほっ)

劇場内部もすごく豪華。前回行ったゴルドニ劇場の比ではないほど豪華絢爛。2階席のセンターのバルコニー(一番いい席)のキンキラ具合なんて(表現が安っぽい)とんでもないです。天井の空色がとてもきれいで、まるで教会の中かのようでした。そして天井に時計が埋め込まれているのがとっても斬新。でもこれとっても便利でした。1階後方からだとかなり見やすいんですよね(笑)日本でもやってほしい(舞台に集中しなさい)。

f:id:mm118:20161125062317j:image

 

1階席から見上げるとこんな感じ。

 f:id:mm118:20161125062405j:image

天井のシャンデリア。分かりにくい…

f:id:mm118:20161125062148j:image

舞台の上のほうにあるのが字幕のモニター。イタリア語が左に、英語が右に出てました。天井には時計が埋め込まれているのですが分かるかな…?

 

本日の演目は

 

AQUGRANDA  

 

聞いたことがなかったため、ググって調べても日本語のページが出てこない。おかしい。なんならWikiもヒットしてくれない。おかしい。

で、劇場の公式ページを検索すると、特設ページが当時はありました!

 

www.teatrolafenice.it

 

えっと、1966年に起きた海面高さ190センチのアクアアルタ*1から50年を記念して制作された、今年初演のオペラ。

…今年初演のオペラなの!?

どうりて日本人のレビューがないわけですね。

乏しい英語力をフルに使って読んできたHPのさっくりめの解説と、オールイタリア語で全く分からなかったHPに貼られていたリンクのYou Tubeの知識のみで、観劇に臨むことになりました。

 

舞台上の上手には男声、下手には女声のコーラス隊が。舞台センターには薄い水槽のようなセットが。上の写真の舞台中央に見えるガラスみたいなものが水槽です。この水槽がプロジェクター?として画像を映し出す役目もしていました。その奥に四角いテーブルと何脚かの椅子のみで、すべて真っ黒。不思議な世界です。

 

※ネタバレ注意※

 

コーラスから始まり、ベネチアの街並みの画像が水槽に映し出されます。不安を覚えるようなコーラスと、次々に進みだす映像の中、水色のワンピースを着た女性と上半身裸で下は黒い長ズボンをはいた男性たちが登場。彼らは、ヅカ的に表現すれば「波のダンサー」のようでした。抽象的なものを具現化する存在でした。しばらくすると、水槽のセットに上から雨のように水が降って水槽に溜まっていきます。そしてメインキャストの方々が登場して物語が始まる…という感じです。

この時点で、歌唱はオペラなのに、演出が現代劇すぎてまずびっくり。ダンサーがいるとは思わなかったし、背景がプロジェクションで映し出されるとも思ってなかったので、もうかなりびっくりです。

 

あらすじ (私が観て分かった限りなので、間違っている可能性大)

1966年11月4日。ひどい雨が降る日の夜。今日のアクアアルタはひどくなると考える人や、いつも通りだと考える人。こんな日なのにいい格好をして靴を買いに行く人やそんな夫を止める人。街の警察官や気象予報士?ヨーロッパ各地で荒れた天気が続いたこの時期。海面はいつもに増して上昇。風向きによって海面は上昇を続け、多くの人が不安に思う中、満潮時間を過ぎてもなお、海水面は上がり続ける。そして、午前一時を過ぎ、2世紀にもわたり街を守っていた防波堤が崩れ、ベネチアに水が押し寄せる。町全体が被害にあったため、次の満潮までにほぼすべての島民が別の島に避難することに。しかし、残ることを決めた4人の男たち。次の満潮の時刻がせまり、海面はまた高くなってきます。このままでは自分たちごとベネチアが一度沈むのでは…

 

っていうので、ストーリーの8割はこんな感じでした。1時間20分の一幕もののオペラです。主人公はだれ、というより、群像劇のように思えました。

見どころはやはり、水を使った演出!

夜が更けて雨がきつくなるにつれて、水槽に水がどんどん溜まっていき、渦をまくようになります。そして、メインキャストも海面が上昇することにより濡れていくさまを、ダンサーによって長靴*2に入った水をかけられて濡れていくことで表現されてました。そして満潮になる前くらいから舞台上はコーラス隊とダンサーのみとなり、ダンサーたちが水槽を上に押し上げるかのような振りで水槽が上昇していきます。そして、満潮の時になると、水槽の下から水が流れ出し、下にいるダンサーたちが文字通りびしょ濡れになっていきます。

この時の水の量が尋常ではなかったように思えます。スーパー歌舞伎を見た時もかなり水を使ってましたが、水槽によって目に見える量の水が流れ出す光景は圧巻でした。あの水どうやって処理しているんだろう?

その後は、ダンサーもメインキャストもみんな長靴を履いて登場しています。おもしろい(笑)

実際のアクアグランダの時の写真や映像もプロジェクションに使用されていました。水が引いた後なのに膝まで水があり、ヴァポレット*3の乗り場がひっくり返っている。まるで日本のひどい台風の後のような様子でした。

 

オペラといえば、古くから続く格式高い娯楽作品というイメージがありました。古典的なオペラがどんなものかは全く分からないけれども、きっとこれは現代劇であることはわかったし、オペラも進化を続けているのはミュージカルや宝塚と変わらないのだと思いました。そして、ただの娯楽作品にとどまらず、歴史を伝える役目を担い、最新の技術を使って新作を残していくのだとも思いました。

 

オペラの歌唱はもちろんですが、あの水の迫力や、コーラスの厚さは舞台に行かないと分からないもの。そして古きよき劇場で最新の技術による最新作を上演することに、こんなに違和感がないことがとても面白かったです。やっぱり、劇場に足を運ばないと感じられないことがたくさんあるし、行ってよかったなと思えます。やっぱり生のステージはおもしろい!!

 

 

*1:ベネチアで、満潮により道が沈む現象。毎年秋に発生する。ちなみに普段は満潮でも80センチぐらいで、道が沈むことはない。

*2:アクアアルタになると長靴が必須。ひどい日は未だに膝丈まで水面が上がってくるらしく、アクアアルタの日は、あの、日本でも見る、黒い膝までの長靴を老若男女関係なく大勢が履いている。

*3:ベネチア水上バス。公共交通機関。